• 事業等のリスク

事業等のリスク 事業等のリスク

当社グループでは、「内部統制システム構築の基本方針」に規定する「損失の危機の管理」に基づき、リスクの未然防止及び発生時の影響の最小化に向けて、「リスク管理規則」等の必要な規則及び体制を整備しています。リスク管理規則では、「リスクを特定・分析し、対策を講じる」プロセスを毎年実行し、持続的、かつ円滑な事業運営を図ることを目的としたリスク管理の運用ルールを定め、サステナビリティ推進部が主管部門となって運用を行っています。
事業に係るリスクは、リスク管理フローに沿って担当各部門にて、想定されるリスクの起こりやすさ(頻度)と起こった場合の影響度(売上・利益への影響等)を評価し、重要度の高いリスクを優先に回避策・軽減(低減)策・移転策を検討・立案・実行しています。これらの対策については、期中にサステナビリティ推進部が担当部門に対するヒアリング等を通じて有効性評価を行い、実施状況を継続的に確認しています。年度毎のリスク評価結果は、マネジメントレビューを経て、取締役会に報告されるとともに、全社員に展開されます。また、事業計画や中期事業計画等の策定においては、その策定プロセスの中でリスクを分析し、対策も合わせて計画に織り込んでいます。
なお、文中における将来に関する事項は、2023年6月26日現在において当社グループが判断したものです。

当社グループでは、事業のリスクを以下のとおり「事業活動リスク」「財務リスク」「経済リスク」「自然・事故災害リスク」「法務リスク」「労務リスク」「社会リスク」「政治リスク」の8つに分類しています。

(1) 事業活動リスク

① 市場動向・商品市況・競争環境の変動
当社グループは、売上の大半をディスプレイに依拠しており、事業及び業績は、国内外におけるディスプレイ市場及びディスプレイを搭載する完成品市場の影響を受けます。完成品の市況は、景気の変動等による個人消費の動向、消費者の嗜好、季節性等に大きく左右され、これらの変動により受注が減少した場合には、部品や完成品の過剰在庫、又は工場稼働率低下による機会損失が生じ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、競合他社との競争の結果、販売価格が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループは、「世界初、世界一」独自技術を価値創造の源泉とし、脱過当競争・脱コモディティ化を図り、販売価格水準の維持及び向上を目指すとともに、原材料や部品の削減、歩留りの改善等によるコスト低減に取り組み、販売価格の下落に備えておりますが、脱過当競争・脱コモディティ化が進展せず、当社グループでのコスト低減幅以上に販売価格が下落した場合又は利益率の低い製品の販売比率が拡大する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 技術・研究開発
当社グループは、高度な技術を必要とするディスプレイの製造・販売を行っているため、技術の優位性の確保は、当社グループの競争力にとって極めて重要です。当社グループは、従来技術と比較して大幅な低消費電力や高精細化を実現するバックプレーン技術や次世代OLED等、唯一無二の技術を開発し、ディスプレイ市場におけるニーズをけん引している状況にあると認識しておりますが、最新の技術を利用した製品を迅速に顧客に提供するためには、継続的な研究開発は不可欠です。
かかる研究開発において、当社グループでは、明確な開発方針のもと、研究開発対象の厳選、開発段階での進捗レビュー及び継続是非の判断を実施しています。しかしながら、こうした施策にもかかわらず、成果が収益に繋がらない場合、又は想定した成果を得られず当社グループの技術優位性が損なわれる場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 生産活動
当社グループが営むディスプレイ事業は、大規模な生産設備の取得及び維持、大量かつ安定的な電力供給、並びに多くの従業員の雇用を要する、固定費比率が比較的高い事業です。したがって、顧客需要の減少、他社との競合等により当社グループの工場の稼働率が低下する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、電力会社による電力供給の制限や、石油・天然ガスの輸入価格の高騰又は円安等による電気料金の値上げが行われる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、原材料・部品等を複数の仕入先から購入しており、原材料等が適時、適量に調達できることを前提とした生産体制を敷いています。しかしながら、原材料・部品等の一部については、その特殊性から仕入先が限定されているものや仕入先の切替えが困難なものもあります。仕入先の経営環境の悪化や災害等により必要な原材料・部品等の供給遅延、供給不足又は価格高騰等が生じた場合には、当社グループの製品の納期に遅延が生じる可能性、又は他の仕入先からの購入のための費用増加が生じる可能性があります。また、調達した原材料・部品等に欠陥や瑕疵が存在した場合や、当社グループ若しくはその顧客の求める仕様が満たされていない場合には、当社グループの製品の品質及び評価に影響を及ぼす可能性、当社グループ又はその顧客に対するクレーム、訴訟に発展する可能性、又は調達した原材料・部品等の評価減や返品等に伴う費用増加が生じる可能性があります。
更に、高精細、低消費電力といった高付加価値のディスプレイの生産には、精緻な生産技術と成熟したスキルを要します。当社グループが生産する製品はカスタム品が大半であり、製品ごとに部材や製造装置の設定が変更となることが多いため、特にノウハウの蓄積が少ない新技術を採用した製品の生産活動においては、製品の歩留り向上に時間を要することや、品質トラブルが生じることがあります。また、顧客との契約に基づく供給義務の履行のため、歩留りが低い状況においても製品の製造を継続する必要が生じる場合もあります。当社グループでは、開発、設計、プロセス、製造、品質保証の各分野の摺合せを綿密に行うことで、そうした問題の発生の極小化を図るとともに、問題が発生した際には早期に解決を図るための体制を構築し、生産ライン従事者のスキル向上のための教育プログラムも完備しています。しかしながら、そうした対策をもってしても、歩留りの悪化や品質トラブルが生じた場合には、当社グループの製品の評価に影響を及ぼす可能性、又は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 経営戦略
当社グループは、企業競争力強化や収益性向上、長期的な供給体制の維持、新技術及び新製品の開発のため、部材メーカー、装置メーカー、完成品メーカーを含む外部企業との協業を実施しており、今後も研究開発、製造等の分野において競争力を強化するため、外部企業との新たな協業に加え、戦略的提携及び買収等を実施する可能性があります。これらの協業、戦略的提携及び買収等は、資金調達の制約、戦略上の目標変更、技術管理又は製品開発等の事業上の問題の発生、若しくは許認可等の規制上の問題、市場の変動等により、実施又は維持ができなくなる可能性があるほか、実施後に十分な成果が得られない可能性があり、そのような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 特定のアプリケーション及び顧客への依存
当社グループの売上高は、特定のアプリケーション又は製品、及び特定の顧客への販売に相当程度依存しています。当該アプリケーション又は製品の市場における需要の減退、当該顧客のブランド力の低下、当社グループの製品が顧客の要求する水準を満たせない場合、又は競合他社による当社グループ製品に代替する新製品の開発等による当社グループ製品の競争力低下等により、受注の減少、利益率の低下、又は取引条件の悪化が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

⑥ 固定資産の減損
当社グループは、多くの有形固定資産を保有しています。固定資産の連結貸借対照表計上額につきましては、当該資産から得られる将来のキャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、競合やその他の理由によって事業収益性が低下し当該資産が十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合には、減損の認識が必要となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 事業構造改善費用
当社グループでは将来にわたり競争力を確保するため、必要に応じ生産効率の低い生産拠点の閉鎖や研究開発の中止等の事業構造改善を実施する場合があります。その場合において、設備の減損や従業員の処遇に関する事業構造改善費用が発生するほか、技能を有する従業員の流出等の可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 気候変動リスク
当社グループは、2022年度からTCFDの枠組みに基づくシナリオ分析を実施し、気候変動に伴うリスクと機会を明確化しており、今後脱炭素化(カーボンニュートラル)への取組みを強化してまいりますが、かかる取組みに伴う費用負担や、将来的なカーボンプライシングの導入による費用の増加が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、カーボンニュートラルに向けた取組みが顧客からの要求水準に満たない場合、顧客との取引が制限される可能性があります。更に、慢性的な気温上昇に伴う自然災害の頻発化や甚大化によるサプライチェーンの混乱や、生産性の低下、洪水等に備えるためのBCP対応コストの増加が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 財務リスク

① 資金調達・資金繰り
当社グループを取り巻く事業環境は、世界的なインフレによる民生機器出荷台数の減少及び部材・エネルギー費等のコスト上昇により厳しい状況にあり、当社グループにおいては、当期も厳しい業績とフリー・キャッシュ・フローの赤字が継続する見込みとなっております。一方、当社は、前期においていちご及びINCJの支援を受けたことにより、当連結会計年度末現在の借入金残高は0円の無借金状態となり、財務状況は大幅に改善しております。(その後、2023年5月30日付でいちごより40億円の短期借入を行っております。)また、2023年3月22日付で、いちごに対する第三者割当により第13回新株予約権を発行しており、今後、いちごによる当該新株予約権の行使がされた場合は、最大約1,734億円の調達がされることとなるため、当面の資金繰りに目途は立っております。
しかしながら、いちごにより当該新株予約権の行使がなされない場合、若しくは行使が一部に留まり十分な資金が確保できない場合、かつ、金融機関等からの調達が十分に実行できない場合には、手許資金が当社の事業遂行上必要な水準を下回る場合があります。
なお、第13回新株予約権の半数の行使期間は、2023年6月1日から2028年5月31日までであり、残り半数の行使期間は、2023年12月1日から2028年11月30日となっております。

② 大株主との関係
いちごは、本有価証券報告書提出日現在、当社の発行済株式に係る議決権数の78.2%に相当する株式を直接保有する支配株主となっており、当社の株主総会の特別決議を要する事項(他社との合併等の組織再編、重要な資産や事業等の売却、定款の変更等)及び普通決議を要する事項(取締役の選解任、剰余金の処分や配当の決定等)について、拒否権を含む重大な影響力を有しております。また、いちごとの間の投資一任契約に基づき、いちごから投資運用に関する権限を受託しているいちごアセットマネジメント・インターナショナル・ピーティーイー・リミテッドへの投資助言を行う、いちごアセットマネジメント株式会社の代表取締役社長であるスコット キャロン氏は、当社の代表執行役会長CEO兼取締役です。
この状況に対し、当社は、2021年3月期に指名委員会等設置会社に移行しており、社外取締役が過半数を占める監査委員会、指名委員会及び報酬委員会を設けることで独立性の担保を図っています。また、事前承認事項等の設定はありません。更に、スコット キャロン氏は、当社によるいちご及びその関係会社との取引において利益相反の懸念を回避する観点から、かかる取引に関する取締役会の審議及び決議には参加しておりません。それでもなお、株主総会の承認を必要とする事項に関し、いちごが影響を及ぼす可能性があります。
また、いちごは、当社の企業価値向上を支援するスポンサーとして、長期的視点から株式を保有する意向を当社に対して示しておりますが、一方で、「④上場維持基準への不適合」に記載のとおり、当社は、東京証券取引所プライム市場における上場維持基準の適合に向けて、いちごの持株処分による持株比率低下を図る必要があります。かかる状況下、今後、当該上場維持基準への適合に向けていちごが当社株式の一部を売却した場合、又はその他の理由に当社株式の一部又は全部を売却した場合には、売却の方式、タイミング、規模等によっては、当社株式の需給関係及び市場価格に影響を与える可能性があります。
また、当社第2位の株主であるINCJにつきましても、当該上場維持基準への適合に向け、持分処分による持株比率の低下を図る必要があります。なお、INCJは、産業競争力強化法等の一部を改正する法律(平成30年法律第26号)による改正前の産業競争力強化法に基づく経済産業大臣の認可を得た上で行われた、旧株式会社産業革新機構(現株式会社産業革新投資機構)からの新設分割により設立された会社であるところ、当該認可に係る告示(20180913経第4号)における「認可条件」として、産業競争力強化法(設立時の名称は「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(産活法)」)に基づき設立されておりますが、同法により2025年3月までに保有する全ての株式等を処分する必要があります。

③ 株式の希薄化
当社の本有価証券報告書提出日現在の発行済株式数は、普通株式3,880,388,022株、及び普通株式の取得請求権を有し議決権のないE種優先株式5,540株です。また、いちごに対し、普通株式を目的とする第13回新株予約権を発行しております。
E種優先株式の全てが普通株式に転換された場合に交付される株式数2,308,329,640株(議決権数23,083,296個)に、第13回新株予約権が全て行使された場合に交付される株式数3,852,444,400株(議決権数38,524,444個)を合算した総数は6,160,774,040株(議決権数61,607,740個)であり、本有価証券報告書提出日現在の普通株式の発行済株式総数3,880,388,022(議決権数38,803,443個)を分母とする希薄化率は158.77%(議決権ベースの希薄化率は158.77%)に相当します。
このように、E種優先株式の普通株式への転換請求権が行使された場合や、第13回新株予約権が行使された場合は、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化し、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

④ 上場維持基準への不適合
前連結会計年度末現在において、当社の「流通株式比率」は14.6%であり、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準である当該比率35%以上を満たしておりません。東京証券取引所の規則上、当社は2022年4月4日付の市場区分の変更前に東京証券取引所市場第一部に上場していたことから、2025年3月末までの経過措置期間内に適合することが必要となります。一方で、東京証券取引所の規則には、第三者が事業再生を支援するために一定の上場株券等を所有する場合であって、5年以内に上記の上場維持基準に適合する見込みを有すると東京証券取引所が認めるときには、5年間(又は東京証券取引所が認めた期間)、上場維持基準の適合の猶予が認められる特例があります。当社は、事業再生支援目的でいちごとの資本提携契約を締結し出資を受けていることから、5年後の2028年3月末までを計画期間とする特例適用が認められております。
プライム市場の流通株式比率に適合するためには、前連結会計年度末現在78.2%の当社普通株式を保有するいちごの持株処分による持株比率低下を図ることが最大の課題であります。また、同時点で当社普通株式の5.5%を保有する当社第2位の株主であるINCJの持分につきましても、持株処分による持株比率の低下が必要となります。
当社は、プライム市場の流通株式比率の適合に向けていちご及びINCJと持株比率の低下等について協議をしてまいりますが、そのためにも、成長戦略「METAGROWTH 2026」に沿って、早期の業績等改善を進めていく必要があると認識しており、今後一層業績改善に向けた取組みに注力してまいります。しかしながら、こうした取組みをもってしても、2028年3月末までの猶予期間内に流通株式比率が上場維持基準に適合しない場合は、上場廃止となります。

⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、当連結会計年度において6期連続で営業損失及び重要な減損損失を、9期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当該状況を解消するため、当社グループは、全社的な事業構造改革として、設備利用効率の改善、資産規模の適正化による生産性向上及びサプライチェーンの見直し等によるコストの更なる削減に取り組んでおります。この戦略的取組みの一環として、2022年10月28日開催の取締役会において、製造連結子会社SEの全株式をSuzhou Dongshan Precision Manufacturing Co., Ltd.に売却することを決議し、同社との間で株式譲渡契約を締結し、2023年1月までに株式譲渡を含む全ての手続を完了いたしました。また、2023年3月を目途に生産終了を決議していた東浦工場に関して、同年3月10日付の取締役会決議に基づき、同工場内一部建物の賃貸先であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社に対し、2024年4月1日を物件引渡日として同工場の建物を譲渡することにつき、同社との間で最終契約を締結いたしました。今後も既存事業の選択と集中を進め、収益性の更なる向上に向けた経営資源の最適化に引き続き取り組んでまいります。
上記施策に加え、技術基盤を価値創造の源泉とし、脱過当競争・脱コモディティ化により収益性の抜本的な改善を図るための成長戦略「METAGROWTH 2026」を2022年5月13日付で発表し、引き続き推進しております。本成長戦略における主な事業戦略として、同年3月30日に発表した超高移動度酸化物半導体バックプレーン技術「HMO」、同年5月13日に発表した次世代OLED「eLEAP」のほか、車載及びVR製品、並びにそれらに関連する知的財産権の積極活用等を中心に製品・事業ポートフォリオを再編し、早期の黒字体質の安定化と事業成長を図っていく方針であります。
財務面では、世界的なインフレ高進やサプライチェーンにおけるリスクに備えた手許資金確保の重要性に鑑み、INCJとの間で、2019年9月2日付当社借入金(元本総額200億円)の2023年2月28日までの返済期限再延長につき合意した後、同年2月10日付の取締役会決議に基づくいちごからの短期借入(元本総額200億円、以下「2023年2月10日付当社新規借入」といいます。)を原資として、全額を返済完了いたしました。
また、本追加資本提携契約に基づき、いちごは、当社に対する債権総額約1,017億円(2022年12月22日付Short-Term Loan Agreementに基づく当社借入280億円、2023年2月10日付当社新規借入200億円及び同年2月27日付でINCJから譲渡された当社債務約537億円の合計に相当)のうち150億円を、2023年2月27日付で放棄しました。
さらに、本追加資本提携契約に基づき、いちごに対する当社普通株式(一部放棄後の債権残額の現物出資による総額約867億円の調達)及び当社普通株式を目的とした第13回新株予約権(行使時の調達総額:最大約1,734億円)について、2023年3月22日付でそれぞれ払込み及び発行手続を完了しております。
以上の施策により、当社借入金の全額が自己資本に振り替わったことで、大幅な負債圧縮、長期安定的な資本構成及び将来的な資金需要に対する財務施策の機動性向上を確保することとなりました。加えて、今後の資金需要に応じた機動的な借入実施(いちごからの同年5月30日付元本総額40億円)、第13回新株予約権の行使のほか、低効率資産の売却又は流動化等も含め、引き続き適時適切な資金調達策を講じてまいります。
一方で、昨今の世界的な原材料費の高騰、エネルギー費高騰による動力費や輸送費の負担増加及びグローバルな消費減退等の影響により、早期の業績回復による黒字転換が遅延し、当社グループ資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性を勘案すると、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。

(3) 経済リスク

① 経済状況の変動
当社グループは、グローバルに事業活動を行っているため、世界経済の動向に起因する完成品需要の変動により、当社グループの事業、業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。とりわけ、VR機器等高価な民生機器や耐久消費財である自動車の需要は、経済状況の影響を強く受けるため、国内外の景気が悪化する場合等には、それら完成品に採用される当社製品の需要が減退し、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 為替相場の変動
当社グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっており、外貨建で取引されている製品・サービス等のコスト及び販売価格は為替の影響を受けるため、為替相場の変動により当社グループの事業、業績及び財政状態が悪化する可能性があります。加えて、海外子会社の現地通貨建の資産・負債は、連結財務諸表作成の際には円換算されるため、当社グループの財政状態は為替相場の変動による影響を受けます。

(4) 自然・事故災害リスク

① 災害・その他の要因による影響
当社グループは、製造拠点を日本及びフィリピンに、販売拠点をグローバルに展開しています。また、中国及び台湾のEMS(電子機器受託製造)企業と提携し、後工程生産を委託しています。地震、津波、豪雨、洪水、落雷等の自然災害、コンピュータウィルスの感染、顧客データの漏洩、部品調達先等の罹災によるサプライチェーン上の混乱、疫病の発生や蔓延、戦争、テロ行為、暴動あるいは労働争議等が発生し、当社グループの拠点やEMS企業が大打撃を被った場合には、生産・出荷や販売活動が停止する恐れがあります。また、災害により電力供給量の低下や物流ルートの遮断等、社会インフラが不安定化した場合には、生産能力の低下、原材料の調達難、製品供給の遅延等、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
かかる災害による損害の発生に備え、当社グループは、建物、構築物、装置、在庫及び運搬中の貨物の代替コスト及び、事業の中断、製造物責任等に対して適切と判断するレベルの補償範囲をカバーする各種保険に加入しておりますが、当該保険には免責金額が設定されているものがあるなど、全ての損害額がカバーされるものではありません。

② 環境規制その他の法的規制
当社グループの事業は、国内外の様々な法令、規則等による制約を受けています。また、世界各地域において、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関する様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、製品の製造販売活動や設備投資が制約を受けるなど、事業展開に支障が生じる可能性があるほか、各種の法規制が制定又は変更された場合には、その遵守対応のための費用が増加する可能性があります。また、当社グループにおいてこうした法規制の違反が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性や社会的評価に影響を与える可能性があります。

(5) 法務リスク

① 重要な訴訟の発生
2020年7月16日付で、当社の過年度決算における不適切な会計処理により損害を被ったとして、当社の株主1名及び当該株主が代表取締役を務める国内法人株主2名から、当社並びに当社の元取締役及び現取締役合計10名に対し、連帯して約3,858百万円の損害賠償を請求する訴訟が提起されております。当社は、原告の主張を踏まえて適切に対応してまいります。

② 知的財産権
当社グループは、当社技術の保護に向け、適切な国・地域での知的財産権の取得に努めていますが、一部の国・地域によっては固有の事由により知的財産権による保護が十分にされていない可能性があります。また、当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用する場合がありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受けられなくなる可能性や、当社グループにとって不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性、競合他社が当社グループより有利な条件で第三者から使用許諾を受け当社グループの競争力が相対的に低くなる可能性があります。

③ 訴訟その他法的手続
当社グループは、先端技術を用いたディスプレイの製造及び販売を行っていますが、先端技術を用いた製品については欠陥や瑕疵が製品の出荷までに発見されにくく、製品の出荷後に品質問題が発生した場合には、製品の回収及び修理、デザインの変更等に多大な費用を要するとともに、技術者等人的資源の投入を要する可能性があり、また、顧客との関係及び当社グループへの信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの製品の欠陥や瑕疵により当社グループ又はその顧客に対する訴訟が提起される可能性もあり、当社グループはグローバルに事業活動を展開しているため、各国で訴訟その他の法的手続の当事者となるリスクを有しています。当社グループが訴訟その他の法的手続の当事者となった場合、各国の法制度・裁判制度の違いもあり、事案によっては巨額の損害賠償金や罰金等の支払を命じられる可能性もあります。
また、当社グループは、ディスプレイ事業における競争法違反の可能性に関し、日本及び他の国・地域において、調査の開始又は訴訟の提起がされる可能性があります。これらの調査や訴訟の結果、当社グループに対して、複数の国・法域において課徴金や損害賠償の支払が命じられる可能性があります。かかる規制当局による処分や訴訟について、その結果を予測することは困難ですが、その解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、その結果によっては、当社グループの事業、業績、財政状態、及び社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 労務リスク

① 人材確保
当社グループは、技術部門において専門性の高い優秀な人材を採用又は育成することにより、競争優位性を確保することができると考えています。しかしながら、専門性の高い優秀な人材は限られていることから、人材の採用及び確保の競争は激化しております。優秀な人材を確保又は育成できない場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループから、専門性の高い優秀な人材が競合他社に移籍した場合には、その者が有する当社グループの知識やノウハウの流出により、当社の競争力が相対的に低くなるおそれがあります。また、当社グループの経営は、現経営陣の能力と貢献に相当程度依存しており、何らかの理由により経営陣が辞任しその代替が確保できない場合や、経営陣の健康状態、訴訟その他の不測の事態への対応により当社グループの経営に十分注力できない場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 社会リスク

① 情報セキュリティ
当社グループは、当社グループ・顧客・取引先の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動に関する機密情報、並びにステークホルダーの個人情報を様々な形態で保持及び管理しています。当社グループにおいてはこれらの機密情報を保護するために適切な管理を行っていますが、かかる管理が将来にわたって常に有効である保証はありません。予期せぬサイバー攻撃等の事態により当社グループが保持又は管理する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合には、当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起されるなど、当社グループの事業、業績、財政状態、及び社会的評価に影響を与える可能性があります。

② 感染症の拡大
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大時に、従業員に対する在宅勤務や時差出勤の推奨、作業スペースの隔離、また不要不急な出張の禁止やウェブ会議システムの活用等により接触を抑える対策を実施し、社員やその家族の安全を優先しつつ、生産体制の維持を図りました。また、サプライヤーとの連携により、最大限の部材確保に努め、生産への影響の最小化を図りました。
新型コロナウイルスは、感染症法上5類に位置付けられましたが、今後感染が再拡大した場合、又は他の感染症が流行した場合は、当社又は当社の事業活動に関係する調達、生産、物流等の取引先において、原材料の調達、製品生産の遅れ、又は販売先からの受注減少が予想され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ サプライチェーンにおける人権に関わるリスク
2020年にオーストラリアのシンクタンクが、当社を含む複数の企業がウイグル人の強制労働によって製造されたとされる部品を調達しているとの報告書を出しました。これについて、当社は、強制労働を行っていたとされた、サプライヤーの下請企業2社について事実関係の調査を行いましたが、強制労働があったことを示す事実は確認されませんでした。強制労働があったことを示す事実は確認されなかったものの、その後、上記サプライヤーからは、当該下請企業2社との取引を停止し、それぞれ他のサプライヤーへの切り替えを完了したと報告を受けており、当社も当該事実を確認しております。
当社グループは、全てのサプライヤーに対して「サプライヤーCSR推進ガイドブック」を配布し、強制労働や児童労働をはじめとするいかなる人権侵害にも加担しないことを要請するとともに、「サプイヤーCSR自己監査票」による調査の実施、及び定期的なモニタリングを実行してまいりますが、将来にわたって常にこれら施策が有効である保証はなく、サプライヤーにおいて人権侵害が起きた場合、当社の事業活動に必要な部材の調達が困難となることや、顧客、その他の取引先との取引が停止されることにより、当社グループの業績、財務状況、社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

④ 内部統制
当社グループは、コンプライアンス遵守、財務報告の適正性確保を達成するために内部統制システムを整備し、運用してまいりましたが、2020年3月期に、過年度決算において架空在庫計上や費用先送り等による不適切な会計処理を継続的に行っていたことが判明し、財務報告に係る内部統制に重要な不備があったことが判明しております。当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を十分認識しており、不備を是正するため、2020年4月にガバナンス向上委員会を設置の上、同委員会が検討・策定した内部統制機能の強化を含む再発防止策について、具体的な詳細を定め、全社一丸となって実行いたしました。
その結果、2021年3月期末日においては、開示すべき重要な不備が解消しており、内部統制は有効である旨、2021年6月28日付「内部統制報告書」において開示いたしました。当社は、再発防止の取組みを今後も継続的に実行し、一層コンプライアンス重視の経営を行っていくほか、社内の意思疎通・相互理解の促進によるコミュニケーション向上等により、内部統制の強化を図っております。その一環として、財務報告に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制等の点検・改善等に取り組んでおりますが、将来にわたって常に有効な内部統制システムを整備及び運用できる保証はなく、また、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備又は開示すべき重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

(8) 政治リスク

① 地政学的リスク
当社グループは、日本とフィリピンに製造拠点を有し、中国と台湾に後工程の製造委託をしています。また、グローバルに販売拠点を有し、海外顧客への売上高が当社グループ全体の売上高の大きな割合を占めております。海外事業の展開にあたっては、グローバル子会社の異動、外国における経済情勢や政治情勢の不安定化、新興国でのインフレーション等に基づく賃金の上昇及び現地従業員との関係悪化、外国為替管理の強化、予期しない法規制の新設又は変更、税制、法制度及び事業環境の差異及びその不利益な変更、課税等の行政上の措置、戦争及びテロ等の軍事的影響、反日感情による非買運動等の地政学的リスク要因があり、これらの要因が当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。