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ディスプレイの基礎
液晶とは
液晶とは物質の状態のひとつで、固体(結晶)と液体との間に存在する中間的な状態です。分子配列に高度な規則性を持つ結晶が融解すると、一般には規則性が全く無い流動性を持つ液体の状態になります。しかし、細長い棒状の有機分子の場合、結晶状態から融解すると分子の位置の規則性は無くなりますが、分子の向きの規則性は残ります。このような分子の向きが揃った状態は、液体でありながら方向によって屈折率、誘電率などの物理的な性質が異なる結晶のような性質を併せ持っているので、液晶と呼ばれます。液晶分子の一例として5CB(4-pentyl-4’-Cyanobiphenyl)の構造を示します。
液晶ディスプレイの動作原理
液晶ディスプレイは、2枚の透明電極付きガラス基板で液晶層を挟んだ構造となっています。透明電極間に電圧をかけない時は、液晶分子はガラス面と平行に並んでいますが、電圧をかけるとガラス面と垂直な方向へ液晶分子の向きが変わります。液晶分子はその向きによって光学的な性質が異なるので、液晶分子の動きと2枚の偏光板の偏光方向を組み合わせることで、光の透過量をコントロールすることが出来ます。このような液晶の性質を利用して画像を表示するのが液晶ディスプレイです。
TFT液晶ディスプレイ
スマートフォンやノートパソコンの液晶ディスプレイは多数の画素から構成されています。そしてカラー表示のために、1つの画素はさらにRGB(赤緑青)の3つのサブ画素で構成されています。たとえばスマートフォンで使われているFull HD(フルハイビジョン規格)の解像度では、サブ画素は約622万個(1080 x 1920 x 3= 6,220,800)にもなります。これら多数のサブ画素の液晶を正確に動かすために、サブ画素毎に一つのTFTが必要となります。TFTはThin Film Transistor(薄膜トランジスタ)の略です。TFTは半導体素子の一種で、各サブ画素の液晶に適切な電圧をかけるためのスイッチの役目を果たします。TFT液晶ディスプレイでは、TFTおよび透明な画素電極を形成したガラス基板と、カラーフィルター(RGB)および透明な対向電極を形成したガラス基板とで液晶層を挟み込みます。さらに、両方のガラス基板の外側に偏光板を貼り合せ、裏面にバックライト光源を配置します。液晶にかける電圧を変化させることで偏光板2枚を含めた透過率が変化し、バックライトからディスプレイ表面に通過する光の量が変化します。このような原理でTFT液晶ディスプレイはフルカラー画像を表示することが出来ます。
OLEDとは
OLEDとは、電気エネルギーを光に変換する性質(エレクトロルミネッセンス)を持つ有機材料を利用した発光デバイスで、電流特性がダイオード特性を示すことからOrganic Light Emitting Diode(OLED)と呼ばれています。OLEDディスプレイは自発光型ディスプレイであることから、高コントラスト、高速応答、薄型化に優れているという特徴があります。OLEDの発光色は有機材料(有機分子)固有であり、その構造により様々な色を呈します。
OLED構造、発光原理
OLEDは数100nmの有機膜を電極で挟んだ構造となっており、電極からのキャリア注入、キャリア輸送、再結合による励起子生成を経て発光が起こります。一般的に絶縁物である有機材料へ電流を流すため、薄膜の有機層を用いており、界面障壁の低減のため、適切な材料を用いた積層構造が必要になります。効率良い発光、安定した特性を得るためにはキャリアのバランス制御、励起子の閉じ込めなどが重要になってきます。それを実現するため、OLEDは各層に機能を設けた多層積層構造が一般的に用いられています。
OLEDディスプレイ
OLEDディスプレイはTFT(Thin Film Transistor)、OLED、封止膜(バリア膜)、偏光板やカバーガラスなどから構成されます。OLED膜の形成方法は真空蒸着法が一般的であり、10nmオーダーの薄膜形成、OLED膜の多層化が可能です。またOLEDディスプレイは多数の画素を有し、さらにRGB(赤緑青)の3つのサブ画素で構成されています。自発光であるOLEDディスプレイの場合、各サブ画素にRGBの発光デバイスをパターニングする必要が有ります。真空蒸着による膜形成の際には、通常ファインメタルマスクを用いてパターニングが行われています。また一般的にOLED材料は水分や酸素に弱く、大気中への放置で著しく特性が劣化します。そのためOLED膜はバリア性に優れた封止膜で保護する必要が有ります。かつてはガラス貼り合わせによる封止が用いられていましたが、近年は樹脂を用いた固体封止が一般的であり、ディスプレイの薄型化やフレキシブル化が可能となっています。